【素人は不動産投資をするな!】
不動産投資は今でも人気のある投資の一つですが、ここではあえて”素人は不動産投資はやめとけ”という理由を簡単に説明しておきます。
既に投資を始めてしまい困っている人や、これから新たに投資を検討している人の今後の判断の役に立てばと思います。
「素人が不動産投資はするな」というには、時代の背景が大きく関係します。
私が不動産業界に足を踏み入れたのも今から約30年も前のこと。
あの頃はバブルがはじけた直後とは言え、賃貸の場合には礼金2ケ月、敷金2ヶ月、更新時には更新料も1ヶ月分を契約者から頂ける時代でした。
なので、家賃以外にも礼金や更新料という名目で副収入的なものも得られました。
バブル絶頂期に、不動産売買に関しては総量規制がかかり売買取引に影響を大きく受けバブルははじけたものの、賃貸に関しては家賃は大きく下落しなかったし、礼金・更新料がなくなったわけではなかったので、それほどの影響はありませんでした。
私が賃貸営業として赤羽の駅前で接客をしていた2~4月、7~9月の賃貸繁忙期には、私一人で賃貸仲介料を1ヶ月350~400万円を稼げる時代でした。
正直ってこの頃に不動産投資をしていれば、莫大な利益を上げることができたと、今は思います。
しかし時代は刻々と変化し、今では礼金・敷金ゼロゼロ物件というのが非常に多くなり、契約更新の際の更新料の有無も、消費者の物件選定時の大きなポイントとなっています。
以前は賃貸運営をしていれば大家さんは非常に儲かる事業でもありました。
家賃についてもバブル直後なのでそこそこいいお家賃が設定できていたのも事実です。
また、敷金は預り金ですが、礼金や更新料は大家さんにとって、家賃の次の大きな収入源であったことは間違いありません。
しかし、今では不動産投資の収入源である家賃は下がり続け、不動産投資の副収入的な礼金や更新料もなかなかいただけない時代になりました。
更新料や礼金に関してはこれまでにもおちらこちらで物議を醸されました。
更新料に関しては最高裁において「違法ではない」という判決が出ています。
以下は、最高裁にでの内容について、「全日本不動産協会」から引用したものを紹介します。
引用:https://www.zennichi.or.jp/law_faq/更新料に関する最高裁判決/
この記事のように、貸主と借主に間で合意契約をされている場合にその更新料の額が常識的(家賃の1~2か月分)程度であれば貸主に対して不利益になるものとまでは言えないということで、最高裁では更新料を認めた判決になりました。
しかし、不動産投資も勝負の世界、競合物件に負けるわけにもいかないので、競合物件が更新料を取っていないのであれば「右に倣え」となるのも仕方がないでしょう。
もともと賃貸事業は、先祖代々から農地を受け継いだ、いわゆる地主と言われる人たちが相続税対策に相続した土地に賃貸物件を建設することで土地の評価を下げ相続税の節税をすることが大きな目的でした。
それが今では賃貸事業は不動産投資という「不労所得」的な投資事業に変化し、相続税対策をする必要もないサラリーマンが、将来の不安を解消する1つの手法として注目を浴びるようになりました。
不動産部門を持つ建設会社などは、空室対策を心配する賃貸業では素人のサラリーマンや地主大家さんに「一切の手間をかけずに毎月定額の家賃収入を得ることができる」というサブリース契約を持ち掛けて安心をさせ、賃貸物件建築の営業を行ってきました。
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不動産部門を持つ建設会社などは、建築をすることで一定の利益を上げ、次にサブリース契約で家主との約定賃料と、実質賃料の差額で利益を上げ、メンテンナンス費用などは家主にしっかり支払わせて利益を取り、管理業務と称して管理料を得るなど、一つの物件で2度3度と利益を得られることから躍起になり、今なお営業は行われています。
そのサブリース契約獲得するために「レオパレス21」や「カボチャの馬車」などに見られた、金融機関と不動産・建設業者などが手を組み過剰融資をするという不正融資問題が起こり、必要もない賃貸物件はタケノコのように増え続け、もともと相続税対策のために先祖から相続した土地に賃貸物件を建築した、いわゆる地主大家さんの物件はドンドン空室になってしまいました。
そうすると建設会社や不動産会社は、空室になったことを築年数の古さが原因だとし、古くなった建物を建て替えさせ、そこで新たに建築利益を取ります。
地主大家さんには新たな借り入れをさせて貸し付けで雁字搦めにするという、抜き差しならない状態にもっていきます。
このように業者の良いように地主・大家さんを支配するという構図が完全に出来上がってしまいました。
そして、業者のいうことに沿わない地主大家さんには、家賃保証をしているサブリース契約を打ち切るという脅しをかけていきます。
そうなれば、空室や家賃滞納が一番不安な地主大家さんは振り上げたこぶしを降ろさざるを得ないでしょう。
ここで一つ例を挙げてみますね。
埼玉県さいたま市大宮区で駅徒歩15分程度の物件を想定します。
相続した土地(土地の借入金はなし)に、建築費6000万円のアパート(1K6世帯)を新築する計画において、頭金なし、金利1%、借入期間35年の場合、月々の返済金額は約17万円になります。
そこで、収支を計算してみます。
なお、固定資産税や都市計画税においては土地の評価額などによって正確な数字は算出できませんので、ここでは収支に入れません。
単純に収入家賃等及び返済額、管理料、メンテナンス費用等に関してになります。
まずは、サブリース契約でない場合を見てみます。
現在の賃貸物件の1K(約25㎡)の新築物件平均賃料は約7万円。共益費は3000円。
築10年以上の物件相場は60000円程度に下がります。
1ヶ月当たりの収支(管理委託契約)
73000円x6部屋=438000円
① 管理料は7%とした場合には39200円
② 定期清掃費用 月1回の定期清掃 25000円
③ 借入返済額 170000円
①+②+③=234200円(毎月かかる経費)
家賃収入438000円-固定経費234200円=203800円
この203800円が手残りとなります。
次にサブリース契約で見ていきますと、
1か月あたりに収支 (サブリース契約)
73000円x6部屋=438000円
この金額の80%~85%で一括借り上げのサブリース契約となります。
ここでは厳しく見て80%で見ますと、
438000円x80%=350400円
更にこの中から上記の②+③=195000円を差し引きますと、
手残り金額は155400円となります。
この計算でいくと年間1864800円の収入となります。
サブリース契約会社はここで正規家賃との差額87600円が粗利となります。
年間で1051200円の粗利となります。
これは新築の段階から当初10年程度だと考えてください。
何だか、大家さんは大きな借金を抱えているのに、借金を抱えないサブリース会社と比べて収益的にはそんなにおいしくありませんよね。
この計算でいくと10年間で約1050万円もの粗利益を持っていくわけですね。
新築時ですと家賃設定が70000円程度は見込めますが、築年数が経過すると家賃は当然下がり始めます。
築10年後に周辺相場を含め家賃の見直しで築10年後の家賃を60000円に設定したとすると、家賃等総額は378000円になります。しかし、固定経費は変わりません。
管理契約の場合の単純に1部屋10000円下がりますので、378000円の家賃に対し7%の管理料は26400円、それ以外は上記の計算で変わらないので19500円
378000円ー26400円ー195000円=156600円
つまり、手残りは156600円、年間1879200円、
サブリース契約の場合は家賃等総額は378000円の80%なので302400円
302400円ー195000円=107400円
つまり、手残りは107400円、年間1288800円となります。
これに比べサブリース会社は75600円x12ケ月=907200円
上記の手残り金額から修繕費・減価償却費・広告費・不動産取得税や固定資産税などの経費を差し引いた残金に対し、ダメ押しで所得税がかかります。
そう考えると、6000万円もの大金を35年間も借り入れて、月に数万円の利益ということになります。
ここで重要なことを言わなければいけません。
それは・・・・・
上記の計算はあくまで机上の計算です。
つまり、
"満室" を想定した場合の試算であることを忘れないでください。
この状態で、近所に競合物件が建築されたり、築年数の経過により設備が古くなって入居者が決まらなかったりして空室になると、収益は格段に減ってしまいます。
そのために入居活動のため、客付不動産会社に広告料(AD)を支払うとなれば、それこそ経費が嵩張り収益は目減りしていきますよね。
※ あくまでも概算ですので参考程度で考えてください。
更に空室になると、次の入居準備のためのリフォームなりをすると、20~50万円程度かかるでしょう。
如何でしょうか?
このような金銭的なストレスの他に
1 空室
2 入居者間のトラブル
3 建物の維持管理
など、管理会社やサブリース会派に任せてあるとは言え、全く無関心というわけにはいきません。
このようなストレスが、物件保有の間はずっとあなたにのしかかってきます。
ここまでの説明が、「不動産投資はやめておけ」という理由です。
この収支計算はあくまでも土地については一切の借り入れがないという状態ですので、土地を購入して上記の計画を立てた場合には、手残りはさらに少なくなり、ややもすると手出しの状態になります。
簡潔にまとめると、6000万円もの大金を借り入れて賃貸アパートを建て、35年もの長期にわたり、月20万円弱の収入で、しかもそれは築年数が経過すればするほどメンテナンス料などの費用も掛かり、入退室の際には、原状回復に関するリフォーム代や入居募集時の広告宣伝費等も必要でしょう。
外壁塗装などすれば今回の計画建物であれば150万~200万円程度が10〜15年毎にかかります。
つまり、賃貸経営には出口をしっかりと考えなくてはいけないということです。
相続税対策だけできればいいというのであれば、今後も賃貸経営をしていくのもいいと思いますが、「不動産投資」という考え方で「不労所得で儲けたい」というのであれば、今後不動産投資では、月に数十万も儲かるというおいしい話ではありません。
ただ、上記のような計画の建物を3棟以上保有できたとしたら、月に数十万から3桁は楽に儲けることはできるでしょう。
ただし、土地の取得費用がかからないということが大前提です。
ではなぜ、不動産投資で儲かっている人がいるのか?
簡単に言うと、出口を明確にしていることです。
取得した物件で一生食いつなぐという意識を持っていないのです。
土地付きアパートを安く仕入れ、それを化粧し満室にしたら売却時期を見計らい思い切って売却、そこである程度の利益を生み出しそれを元手に物件のランクアップを図ります。
例えば、800万円程度で4部屋の築年数の古いアパートを購入し、500万円程度で化粧をし満室にしたとします。
その時点で家賃収入が月20万円、年間240万円であれば10年で2400万円。
これを、利回り8.0%の物件として3000万円で売却するという出口戦略を組みます。
これがうまく売却できれば、
3000万円ー800万円ー500万円=1700万円(粗利)
という素晴らしい商品になったということです。
仮に上記の物件価格が、2000万円で購入し、同じように500万円をかけて化粧した場合には、仮に3000万円で売却できたとしたら、
3000万円ー2000万円−500万円=500万円(粗利)
この場合、利回りが同じ8%の物件でも、利益率がこれだけ違ってきます。
なので、不動産投資では仕入れと売却のタイミングが成否の分かれ目と言えます。
しかし、これを区分所有のマンションで考えた場合、購入額が同じ800万円で、家賃が8万円取れたとしても、年間で92万円。
同じ利回り8%を想定し、出口戦略を組んだ場合、販売価格は1150万円。
1150万円ー800万円=350万円
リフォームで50万円かけたとしても粗利は300万円。
この他にも、ここでは計算に入れていないのが家賃収入です。
1棟物の場合には年間240万円ですが、区分所有は92万円。
同じ不動産でもこれだけキャパシティが違うわけです。
ただし、ここで家賃収入をあえて計算に入れなかったのは、家賃収入を生活の柱にしないためです。
不動産投資とは、家賃を充てにすることではなく、売却益で損得を測る物です。
家賃はあくまでも物件を保持する必要経費として手をつけないという思考を持たないと不動産投資はかなりの高い確率で失敗をします。
このようなことから、区分所有マンション1部屋で老後に安心できるほどの収入を得られるという夢のような話には絶対に耳を傾けないことです。
これまでの内容で、もし不動産投資をやめたいと思ったら、すぐに物件の売却をお勧めします。
当然に購入した金額より高く売れることは難しいかもしれませんが、損失が小さいうちに手じまいをする勇気も必要です。
タイミングが良ければ購入時よりも高く売れる場合もあります。
不動産は”縁もの”です。
あなたが売却した物件を購入したいと思う人はいるかも知れません。
タイミングを逃さないためにも決断は早めにしましょう。
不動産は「買おうと思った時が買い時」とも言いますが、「売ろうと思った時も売り時」と言います。
だから”縁もの”といわれる所以です。
今、売るべきかどうかの判断に悩んでいるならお気軽にご相談ください。
あなたにとって最善の対処法をご提案します。
相談ご希望の方は、「オンライン来店予約」 をご利用ください。
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