
一般家庭も富裕層も海外投資家も「買わない」のだから、市場が崩れていくのは当然である。
こうした事態を受けて、いま業界内ではデベロッパーたちが「経営危機リスク」に怯え始めた。
「ある大手デベロッパーがマンション事業から撤退するという話がすでに広まっています。実際、日本橋エリアでは坪単価400万円ほどが水準だったのに、最近の新築マンションは坪単価300万円前半で売られている。これはデベロッパー側が儲けられる販売価格ではない」(前出・榊氏)
とにかく早く売り逃げて、いますぐ「撤退」したいという魂胆が透けて見えるというわけだ。前出の石澤氏も言う。
「マンション業者の中には、かなりの高額でマンション用地を取得したところも少なくありません。それが予定した価格で売れないとなれば、デベロッパーは経営危機にさらされる危険性が出てくる。そうした中堅デベが在庫を早くはけさせるためにさらに価格を下げれば、マンション価格の下落傾向に拍車がかかることになります」
それがまた業者の経営を苦しめ、「安売り競争」が加速して……そんな「負の暴落スパイラル」が、2020年を待たずに幕を開けたわけだ。
では、これからマンションはどこまで下がってしまうのか。特に危険なエリアはどこか。
「まず、注意しなければならないのは有明や豊洲のエリアでしょう。すでに売りが出ているのに、今後も大規模開発案件があるので、在庫が膨れ上がるリスクが高い。もう坪単価300万円を切るほどまで下がっているが、これが数年かけて最低2割、最悪の場合は半値まで暴落する可能性はある」(前出・榊氏)
元大京取締役で不動産ジャーナリストの大越武氏も言う。
「世田谷、目黒などの城南エリア、中央線沿線の杉並などの城西エリアは、これまで価格が上がり過ぎた分、下がる時は大きく下げるリスクがあります。現在の坪単価は300万円以上ですが、すでに売れ残りが出ている。サラリーマンが買えるような価格になるには、これが200万円まで下がらないといけない」
こうして都心部の価格下落が起き始めると、これまで都心には住めなかった周辺住民が一気に流入。連鎖するように、今度は周辺部が暴落していく。不動産エコノミストの吉崎誠二氏が言う。
「過剰にブランド化している二子玉川などは下落幅が大きく、2~3割下がってもおかしくありません。こうした連鎖現象は次々に起こり、たとえば世田谷でも環七通りの外側の用賀や経堂などは厳しくなってくるでしょう。すでにこのエリアではある新築マンションが売り出しから数ヵ月にして、2割しか売れていないと聞いています」
東京都心から始まった大暴落劇場は、もう止まりそうにない。
「週刊現代」2016年9月17日号より
引用
本文 http://gendai.ismedia.jp/articles/-/49680?page=2
画像 http://gendai.ismedia.jp/articles/-/49680?page=2